「な、ななっ……何してるのよっ!」 今、俺はおそらく生まれて初めてベッドの上で女性に覆い被さり、その驚いた顔を見下ろしている。 何年ぶりだろう。 “妹”のこんな驚きに満ちた表情を見るのは。 人当たりが良く、誰からも好かれる妹・香里奈。 そんな香里奈は、俺のことだけは徹底的に嫌う。……同じ場の空気を吸うことさえ嫌がるほどに。 香里奈が俺のあることないこと吹聴しているせいで、学園では皆からハブられ、 母親すら香里奈の味方をして俺は孤独だった。 ……そう、こんな状況になってしまったのは、 あまりの不条理に怒りが頂点に達して我を忘れてしまったからだったんだ。 「このことを言いふらして家からも学校からも追い出して、もう一生アタシの目に入らないようにしてやるから!」 その言葉を聞いて俺は“キレる”感じが頭の中に甦る。 ……そこまで、俺を排除したいのか……? お前のほうが、俺に対してずっとずっと酷いことをしてきたのに。 「そこまで俺を悪人にしたいなら―― そうなってやる!」
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